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IFA太田氏の今週のマーケットの振り返りレポート(2023年4月22日)

更新日:2023年5月13日


Weekly 5月1日



米株急反発、通信、サービスなど買い戻し主導か


27日の米株はナスダック+2.43%が主導して上昇、NYダウ+1.57%、S&P500指数+1.96%の上昇率は1月6日以来の高水準となった。一般に好決算銘柄が押し上げと伝えられるが、急伸は大幅リストラのメタ・プラットフォームズ、預金流出のファースト・リパブリック・バンクの売り込み銘柄で、売り方の買い戻し主導と考えられる。

ファースト・リパブリック株は3月銀行危機勃発から95%下落しているが、空売りに利用できる株は96%押さえられているとし、品貸料が急騰していると言う。26日までの1週間のFRB緊急貸出制度残高は1552億ドル、前週比113億ドル増となり、金融システムの緊張が続いているが、同株価は一時20%高と急伸した。なお、28日再び同社株は43%下落した。米金融当局が複数の金融機関やファンドと救済策を検討していると伝わり、投資家の不安が広がった。ただ、すでに相場全体に与える影響は限られるようになった。

メタは市場予想を上回る決算だったが、ザッカーバーグ氏の「生成AIだ!」に反応した格好(VR:仮想現実は何処かに吹き飛んでいる)で、終値+13.9%。S&P通信サービスは+5.5%、前日のアルファベット、マイクロソフトなども押し上げた。

米GDP第1四半期速報は年率換算前期比+1.1%と市場予想2.0%、前四半期+2.6%を下回ったが、在庫減少が2.26%ポイント押し下げ。在庫・政府支出・貿易を除く成長率は+2.9%、前四半期比横ばい。個人消費は+3.7%、同+1.0%から上昇。コア個人消費支出(PCE)価格指数は+4.9%、同+4.4%を上回り、債券市場の利回り急伸の契機となった。

3月米貿易統計は輸出増から赤字は前月比8.1%減の846億ドル、GDP押し上げ要因。週間新規失業保険申請件数は22日現在前週比1.6万件減の23万件、市場予想24.8万件を下回り、企業リストララッシュの影響は強まっていない。

27日の時間外でアマゾンがネット販売・クラウド堅調で8%高。レモンド商務長官が「ファーウェイ、アリババのクラウド会社を輸出規制検討(既にHDD供給のシーゲットに制裁金が課され、HDD供給が停止していると言われる)」、EUのIT規制「デジタルサービス法」の適用対象が公表され、クラウドビジネスに見直しが出ている公算がある。半導体はインテル決算でなお強弱感が割れているようだ。国内では、トヨタの22年度世界生産・販売が過去最高。



日銀政策決定会合で日経平均年初来高値


28日、注目されていた、植田総裁にとって最初の日銀金融政策決定会合が開催された。「YCC当面継続」で衆目一致の予想通りだったが、先行き見通しについては国内でも意外に割れている。この日の結果を受けて日経平均は年初来高値の28,856.44円で引け、円もおそらく売り戻しと思われ、133円台から135円台まで売られた。なお、NY市場ではこの日発表された経済指標から5月のFOMC では利上げが必至とみて136円台まで円売りドル買いが進んだ。

生保各社の今年度運用計画が発表となり、目立ったのは「6月にYCC再修正を想定」(日本生命)、「4-9月にYCC解除か修正見込む」(第一生命)。12月の突然のYCC修正で、日本国債積み増し姿勢が各社共通だが、他の各社も、もう一段の金利上昇を望む姿勢。日本国債を空売りしたヘッジファンドと同じスタンスで、空売り玉を貸したのは生保業界の印象。

これに対し、「年内の金利引き上げは困難」との見解は渡辺元財務官(国際通貨研究所理事長)。来年は欧米が利下げに動く公算が大きく、円高局面に向かうとの見方が要因。1ドル115円程度なら政策対応は不要との見立てだ。早めのYCC修正、利上げに動けば予想外の円高圧力が掛かる恐れがある。

誰にも分からないと言われる為替相場。生保各社も想定レンジでは110円程度の円高局面が有り得るとしているが、政策整合性には言及していない。このところスイスフラン全面高が話題で、”取り残される円”みたいなメディア報道まである。スイス中銀は3月に4会合連続利上げを行い、政策金利は1.5%と08年以来の水準。輸入インフレを抑えるための為替介入も実施している。貿易赤字は日本ほど巨額ではない。昔、スイスフランと円は「逃避通貨」と言われていたが、最近は、その評価に差が出てもある意味当然だが、単純にクレディ・スイス危機でスイスフランを売り込んだ向きの買い戻しのようにも思える。

ドル円は120~140円ゾーンの想定を継続しているが、支えるのは安倍・菅政権で行った100兆円のコロナ対策。増税や財源横流しではなく実質日銀引き受けで賄った(円増刷)。日本の景気がそれほど悪化せずに済んでいるが、そのメディア評価は低い。対ドルで円の供給が増えたことで100~120円ゾーンから円安進行となったが、地政学リスクの高まり、米国の容認などが追い風となったと考えられる。財務省・日銀は今回151円で円安を止めたが、黒田バズーカ第二弾時に125円で止めたことを考えると、昨年の日銀対応には対応後手の恐れはある。

今は”流動性相場”との見方をシティグループが発表している。「今年になってからのリスク資産価格の回復は、景気見通し改善と言うよりも中央銀行による1兆ドル規模の流動性投入が関係している」との見立て。投資適格債のリスクプレミアムを50bp(0.5%)程度縮小させる十分な効果があるとしている(米国債利回りが0.5%程度低いとの見方に合致する)。流動性ピークが過ぎ、「今後数週間のうちにグローバル規模で6000~8000億ドル規模の流動性が取り去られる恐れがある」と警告している。何を警戒しているのか分からないが、ジャンク債や為替市場が警戒シグナルを発することになると思われる。流動性が拡大するとの見方は少ないので、株価の上値は抑えられる構図にあると言えよう。



25日まで中国株5連敗、米国も債務上限問題で脆弱面揺さ振り


事件は18日から開催された上海モーターショー会場で起こった。独BMWの子会社がブース来場者にアイスクリームを配布したが、中国人スタッフが中国人に配らず、外国人のみに渡しているとする動画がネットで流され、炎上した。BMWは二度謝罪声明を出したが、社員にBMW車から中国車に乗り換えるよう命令を出す企業まで現れ、BMW株が急落、世界に打電されるニュースになった。

追い討ちを掛けるように、21日、駐仏中国大使が仏テレビ番組で「旧ソ連の国々は主権国家としての地位を定めた国際的合意はない」とロシアを代弁。親中発言でマクロン仏大統領批判に揺れる欧州世論へ、火に油を注いだ。

先々週発表の4.5%成長の中国のGDP統計に懐疑的見方が出たり、アイス事件の背景にEV補助金不正(補助金要請は販売店が行うので不正が横行、EV販売は水増しされているとの批判。補助金は昨年末で打ち切られ、販売苦戦が外資バッシングになっているとの見方)があるとか、上海市の第1四半期税収が前年同期比12.5%減(地方はもっと酷い)、カナダ年金3位のオンタリオ州教員年金基金が香港拠点の中国株投資チームを閉鎖。このところ懐疑的ニュースが多い。

25日までの中国株は5連敗。約1ヵ月ぶり安値水準に沈んだ。3営業日連続で50億元(約7.2億ドル)規模の外国人売り越しが続いていると伝えられる。スーダン調停では無力(進出企業は130社、日本4社とされる)で、習主席の”国際指導力”もハリボテ感がある。ウォール街の「中国礼賛」にも陰りが出ていると見られる。

米国事情も明るくない。米世論調査で「バイデンもトランプも望まず」が約2/3を占め、イエレン財務長官が「連邦債務上限引き上げられずデフォルトなら大惨事」と再び警告、企業の人員削減発表が相次いでいる。

連邦債務問題の影響を最も受けると見られる3ヵ月物財務省証券利回りは上昇し、5.13%、16年ぶり高水準。18日時点で過去最高と伝えられたヘッジファンドの10年物国債ショートポジションは取り残され、中長期債利回りは低下(2年債4%割れ、10年債は一時3.4%割れ)した。FOMC前の綱引きで方向感はない。ただ、引け後のアルファベット(オラクル)、マイクロソフトの決算は予想を上回り、時間外株価は4%ほど上昇。



決算ラリーに金融政策攻防加わる


先週は決算発表の本格化に加え、日銀金融政策決定会合、5月2~3日の米FOMCを控え、金利動向や為替動向に神経質になった。ブルームバーグの月間調査によると「米国のインフレ率は従来の想定よりも速いペースで低下すると見込まれている」。銀行危機による融資縮小が引き締め効果を強めるため、リセッション懸念が強まっているため(もっとも同調査での向こう12ヵ月のリセッション(景気後退)確率は65%で変わらず。コロナ禍急拡大の20年半ば以来の水準)。

ただし、米国の債券市場を動かしているのは「根強いインフレ懸念」でも「リセッション懸念」でもないかも知れない。銀行危機で急膨張したMMF(マネー・マーケット・ファンド、格付が高い、短期の国債や地方債、社債などで運用されるため、安全性が高い)の出入りが左右する。19日終了週のデータでは前週比690億ドル近く減少、米債利回りを押し上げたと考えられる。景況感でなく、18日が納税期限だったためと見られている。その前の週に資産規模が過去最大の5兆2800億ドルに達しており、流出が続くかどうかが焦点。

運用成績では明暗が分かれている。世界最大の政府系ファンド・ノルウェー政府年金基金の第1四半期運用収益率は+5.9%、約70%を占める株式が約8%で牽引した。一方、米大手運用会社ブラックストーンの第1四半期の分配可能利益は前年同期比36%減。商業不動産市場の不振で昨年11月から解約制限を実施しており、資産売却減が響いた。ただ、四半期末運用資産総額は前年同期比8%増(12月末1兆ドル目標からは未達が続いている)。欧米不動産市場の悪化が続けば、リセッション懸念が強まる可能性がある。

5週連続上昇となった欧州株では、ロイターが「欧州銀行株の空売り、4月は一転10億ドルの損失」と伝えた。決算好調銘柄を中心の上昇相場で空売り勢の買い戻しが相場を押し上げている印象。空売りの厚みの差が、高値追いの有無に繋がっていると見られる。

27-28日の日銀会合は「現状維持」だったが、21日発表の3月全国CPI(生鮮食品除くコア指数)は前年同月比+3.1%。エネルギー価格は政府の抑制策が効いているが、コストアップの価格転嫁が続くと見られる。28日の政策決定会合前には「日銀の政策調整は意外に早い」との見方が根強かった。GW明けから再び「6月か7月に小幅調整に踏み切る」との見方が優勢になるかどうか。その場合、今秋~年末に向けドル円は120~125円程度の攻防に向かうとの見方も根強い。GW中は円の取引は薄商いになる。意外と大きな変動になるケースがしばしば見られたので要注意。

株式にとって朗報は米マイクロソフト社長がNHKインタビューに対し「日本への投資重視」を表明。バフェット氏に続く対日投資拡大の動きにつながるか注目される。蛇足だが話題のAI・ChatGPTは日本語だと精度が落ちると言われている。開発課題がある。



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