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IFA太田氏の今週のマーケットの振り返りレポート(2023年4月1日)

更新日:2023年4月15日



様々な景色探りながら4-6月相場へ


昨年3月末の日経平均は27821.43円、TOPIXは1946.40ポイント。道中の波乱を考えると、今年は余裕を持って期末通過した。昨年は4月以降、軟弱展開となり、月末値で3月を抜いたのは8月。その後再び波乱含み展開となった。なお、今年の3月末の日経平均は28041.48円、TOPIXは2003.50ポイント。いずれも大台を超えて期を終えた。

29日付ウォール・ストリート紙が「崩壊し始めたロシア経済、来年には資金枯渇か」と題する記事を配信した。西側企業が撤退し、貿易制限を受け、徴兵や国外脱出で労働人口が大幅減など、窮状を示すデータに事欠かない。ロシア側も頭にきたのか、翌30日、同紙記者拘束のニュースが流れた。また、米NSC(国家安全保障会議)のカービー戦略広報調整官は「食料と引き換えに、ロシアが北朝鮮から追加の武器・弾薬を積極的に獲得しようとしている」と発表した。

米穀物大手カーギルは、ロシア産小麦の輸出業務を7月に停止すると発表した。カーギルは黒海の主要穀物港ノボロシスクの穀物ターミナル運営会社に出資している。これを受けて、シカゴ小麦先物相場は一時1ヵ月ぶり高値。また、原油生産は日量50万バレル程、減産する計画が伝えられ、原油相場を押し上げている。ロシアの窮状は、資源インフレ動向に影響する可能性がある。

いち早く発表される3月独CPI(消費者物価指数)速報値はEU基準で前年比+7.8%、前月の+9.3%から大きく低下したが、市場予想+7.5%を上回った。エネルギーに代わり、食品価格+22.3%が影響した。速報段階ではコアCPIは発表されないが、+5.5%前後と見られている。ドイツ製造業の材料不足は緩和されつつあるが、なお4割程度が供給難を訴える。 

独政府は人手不足対応で、海外労働者受け入れ拡大(西バルカン諸国が中心)を発表した。

引き続き、インフレ抑制状況と政府の対策各論が市場の関心を集める可能性があるが、

ロシア情勢次第で景色が一変するリスクがある。

サウジ-イランの親密接近も注目される公算がある。一般的には、ムハンマド・サウジ皇太子の”バイデン嫌い”が一因と看做され、露中イランの反米協力にサウジも加わったと見る向きがある。ただし、元々のサウジ-イラン対立には、イランの核開発阻止、王朝を打倒しイスラム革命を推進するイランの画策に対抗する狙いがあった。イランは二つともやめる意思はないが、場合によっては、原油相場維持のためにロシア切りに動く可能性も、少数ながら、有り得ると指摘されている。

中国の出方も微妙だ。主に、インフレ状況を軸に、景色の変化を探っていくことになろう。



癒し相場をナスダック100指数が先導、次の不安睨むも修復相場


31日の米VIX(恐怖)指数は18.72、13日に26.52まで上昇したが、20ポイント割れの落ち着いた水準に戻った(20以上は市場の不安心理の高まりを表している)。欧州は15日に32.02まで上昇した後、同じく31日は19.42,日本は16.66。今回の欧米金融危機は一時パニック的雰囲気も垣間見えたが、大規模な売り仕掛け、リスク回避に至らなかった印象をVIX指数の落ち着きが示唆する。

そうは言っても運用機関・投資家は幅広く痛手を蒙っている。パニック的にならなかったのは、金融当局の素早い「預金保護」、「流動性供給」などの対策が奏功したと考えられるが、「流動性供給」は何処かに資金が流れることを意味する。”修復相場”と言っても良いかも知れない動きが、ナスダック100指数にそれが表れたのではないだろうか。普段はナスダック総合指数しか見ていないので、100指数の動きは分からないが、ブルームバーグによると「同指数は昨年12月28日の安値から20%強上昇し、強気相場入り」。強気相場転換は20年4月以来、約3年ぶり。コロナ暴落でも動きが早かった。テクノロジー大型株のウェイトが高い指標で、強気相場が持続するかが焦点と考えられる。

突発的な材料は別にして、先々の悩みとして二つの発言が注目される。一つは英中銀金融政策委員会のマン委員で「エネルギー価格の下落で総合インフレ率は低下するものの、コアの財とサービスは上昇傾向にあり、金融政策を巡る判断は難しくなる」。公務員スト多発などが悩みと暗に示唆しているが、”頑強なインフレ”対策に、市場も右往左往する可能性がある。

もう一つはイエレン米財務長官の「米国は国際機関や発展途上国への融資における中国の影響力に対抗するために懸命に取り組んでいる(中国の途上国融資に懸念を持っている)。28日に世銀等が発表したレポートによると、「08年から21年に掛けての救済資金支援(追い貸し)は22ヵ国、総額2400億ドル」。16年以降急増しており、アルゼンチン1118億ドル、パキスタン485億ドル、エジプト156億ドルが上位。債務返済に窮している比率は2010年の5%弱から22年は60%超と見られている。

米投資銀行ジェフリーズは「欧州の平均的な銀行は保有国債の損失を出して売却したり、固定資産売却などの損切りをしなくとも、預金残高の38%まで流出に耐えられる」との分析結果を発表したが、保有資産は自国の安全資産とは限らない。インフレによる混乱、新興国や中国動向に引き続き注意が要る。



PBR1倍目標。企業戦略に関心が集まりやすい時期


27日の東京市場で、岡三証券株がストップ高となったことが話題だ。24日に27年度までの新中期計画を発表。「期間中、PBR(株価純資産倍率)が1.0倍を超えるまで年間10億円以上の自社株取得を継続的に実施する」と発表したことが要因。総株主還元性向目標も50%以上とした。先週末のPBRは0.49倍。何処まで改善が進むか注目される。

岡三に続き、第一生命HDの菊田次期新社長が「26年度末までに時価総額倍増の6兆円規模」を表明(ただし、変動幅の大きい株式投資は減らすとしている。モノ言う株主エフィッシモを意識している可能性もある)。4-5月の決算発表シーズン、6月の株主総会シーズンに向け、話題になり易い時期でもある。

東証が「PBR1倍」目標を出して、企業が何処まで反応するか注目されている。24日発表のロイター企業調査では、「PBR対策、検討・実施は49%」。回答社数は241社。半分は多いと見るか、少ないと見るか微妙なところだが、積極推進企業の対策は、「ROE向上」66%、「IR強化」60%、「自社株買い」48%、「増配」38%(複数回答)。1倍割れの原因は、「日本経済の低迷」62%、「日本株の低人気化」48%、「成長戦略の失敗」41%、「日本企業の前向き投資不足」39%。世界比較では、昨年7月時点のPBR1倍割れ比率は、TOPIX500で43%、米S&P500で5%、欧州STOXX600で24%。

同じロイター調査で、23年度の事業展望では、「世界的インフレ継続」82%、「世界的な景気後退」59%、「円安」35%、「朝鮮半島や台湾海峡の地政学リスク」30%など。為替は調査時点のドル円136円に対し、131-135円程度が48%を占めた。上場企業にとって低PBR修正意識が何処まで広がるか注目される。




先々週末ドイツ銀行株急落、米債はリセッション(景気後退)想定


24日の欧州市場では、ドイツ銀株が一時15%急落(終値8.5%安)。ショルツ首相は「懸念する理由ない」と表明したが、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ:債務不履行リスクに備えて取引される)5年物が急上昇、4年ぶりの高水準を付けたことが、短期投機筋を呼び込んだ可能性がある。銀行アナリスト等は「クレディ・スイスとは異なる」と相次ぎ表明した。欧州銀行株指数は3.78%安、独10年物国債利回りは一時1.994%と2%割れ、16日のECBの0.5%利上げ強行は裏目となった格好。

ただ、理由はもう一つハッキリしない。あくまで仮説だが、ロシアマネーの逃げ出しが影響している可能性が考えられる。オーストリア銀行大手ラファイゼンが23日に「ECBがロシアの高収益事業から撤退するよう圧力を掛けている」と報じられ、7.9%安。UBSとCスイスに対し米司法省がロシア制裁逃れで調査しているとも報じられた。ロシアマネー(含む資金運用者)にとっては、金融株保有から逃げ出さざるを得ない。ちなみに、クレディ・スイスは制裁に伴いロシア資産176億スイスフラン(約2.5兆円、スイス国内のロシア資産の1/3規模)を凍結と発表している。

デロイトの21年調査によると、金融王国スイスが管理している海外資産は2.6兆ドル(約340兆円)、米国や英国を上回る規模。ただ、スイスの銀行数は02年の356行から21年は239行に減っている。「秘密銀行口座」も今は昔話で、縮小傾向にあり、今回のクレディ・スイス消滅で縮小が加速すると見られている。スイスは今まで流動性支援や企業統治に関する法整備がなかったが、今回の件で急いでいる。もっとも、中東勢も「クレディ・スイスで大やけど」と報じられており、ロシアマネーに限ったことではないかも知れない。

先週は米国では債券利回りが一時6ヵ月ぶりの低水準に急低下。注目の2-10年債利回り差は-27bpまで縮小し-40bp程度で動いている。金利先物市場での5月利上げ確率は24%に急低下、据え置き確率76%。利下げ説まで出始めている。FRBが注視している米個人消費支出(PCE)価格指数が31日に発表された。コアPCEの前年同月比は+4.6%、予想は4.7%、前月も4.7%で幾分インフレが和らいだようだ。

なお、米投資信託協会(ICI)発表の22日現在のMMF(マネー・マーケット・ファンド:米国債で運用するため利回り低下の主因と見られている)流入額は1170億ドル余。記録的高水準が続いている。一方、FRBが発表した15日現在の米銀預金は984億ドルの減少、うち中小金融機関からは1200億ドル流出。MMFへの資金流入の源と見られている。金融小康状態を睨みながらの攻防が続こう。


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