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IFA太田氏の今週のマーケットの振り返りレポート(2023年3月18日)

更新日:2023年4月1日

Weekly 3月20日


米銀破綻が欧州まで飛び火


先々週、米銀・シリコンバレー銀行(SVB)の破綻から始まった金融システム不安は1週間後には欧州に飛び火し、クレディ・スイスがスイス中銀から緊急融資を受ける事態となった。この間名前が挙がった米銀は、SVB(シリコンバレー銀行)、シグナチャー・バンク、ファースト・リパブリック銀行など中堅の銀行

まず、SVBはスタートアップ(一般的に革新的なアイデアで短期的に成長する企業のことらしい)企業向け融資がメインで、IT関係、バイオ関連企業が多いとされる。昨年から激減している米IPO(新規株式公開)1月調達額は前年同月比82.4%減の2.689億ドル、M&A実行額は同77.9%減の489億ドル。IPO,M&Aなどの市場崩壊も銀行破綻の一因と見られるが、この先しばらくは、スタートアップ業界は一段と苦境に陥ろう。今年は8割のスタートアップが淘汰されるとの見方があったが、あながち否定も出来なさそうだ。SVBの別名は「ソーラーバンク」や「気候銀行」。実情は分かっていないが、再エネ投資関連にも打撃が広がる可能性がある 。

驚いたことに、米国の過激左翼集団BLM(ブラック・ライブズ・マター)の活動資金約112億円のうち約98億円はSVBの寄付だったことが明らかとなった。また、同じく破綻したシグネチャー・バンクには破綻前にNY州金融サービス局と検察当局が調査に入っていた。仮想通貨を扱う顧客との関係を調べていたようだが「仮想通貨とは関係なく、経営陣に対する重大な信頼の危機」とされる。

週明けの12日には米財務省とFRB(米連邦準備制度理事会)、FDIC(米連邦預金保険公社)が、SVBの預金を全額保護するとの共同声明を出した。同じくシグナチャー・バンクの預金者も全額保護とした。「預金全額保護」などの処理策が妥当か(BLMの攻撃を受けていた共和党は批判を強める可能性がある)、市場が懐疑的になるなかで、クレディ・スイス株の暴落が発生し、一気に欧州金融不安の様相を呈した。クレディ・スイス株は一時30%急落(年初から既に7割ほど下げている)、UBS、BNPパリバ、ソジェン、ドイツ銀、コメルツなど軒並み8~11%下落した。

3月5日、クレディ・スイスの長年の筆頭株主だった米運用会社ハリス・アソシエイツが保有株全てを売却したと表明。その前の2月28日にスイス連邦金融市場監督機構から「グリーンシル・キャピタル不正取引で監督義務に著しく違反した」と判定されたことが、ハリスの売却のダメ押しをした可能性がある。長らく続く経営不安への対処能力が疑問視されている。代わって筆頭株主となったのがサウジ・ナショナル・バンク。同行会長がCスイスへの追加投資について「絶対的なノーだ」とブルームバーグTVインタビューに答えたのが契機となった。

スイス国立銀行とスイス金融市場監督局は共同声明で流動性供給を表明した。どうやらいったんは落ち着いたようだ。ただし、17日にはドイツ銀行をはじめとして大手銀行がクレディ・スイスとの取引を制限しているというニュースが伝わり、再び株価は8%下落した。



銀行救済など好感、ECBは0.5%利上げ強行


2020年のコロナ暴落が反転したキッカケは、FRBによる社債購入開始だった。金利動向よりも、量的緩和姿勢の維持の方が相場インパクトは強い。今回は「量的緩和宣言」はないが、クレディ・スイスに対するスイス中銀の7兆円資金供給で、量的引き締め策は事実上放棄、実質量的緩和に転じたと解釈される可能性がある。米国の銀行救済策も同様の位置づけになる。

16日付ロイターは「CTA、債券乱高下で運用成績悪化」と伝えた。今回の株価調整には、1,リスク回避行動、2,空売り筋の攻勢に加え、3,ポジション失敗による手仕舞い売りの行動がある。債券では、金利上昇を見込み、債券売りポジションを取っていた。ここでは買い戻しによる金利低下をもたらしている。

かつて、クレディ・スイスはCTA(商品投資顧問業者)と組んで、商品、為替、株式、債券市場を左右する勢力を誇った。そのイメージからか、原油先物相場は一時5ドル超の急落。15日の終値は3.7ドル程度下落し、北海ブレント73.69ドル/バレル、WTIは67.61ドル。中国の1-2月統計が低調だったこともあると見られるが、インフレ観の後退度も焦点となろう。

CTA(商品投資顧問業者)は13日までの3日間でファンド価値が4.3%急落に見舞われたと言う。レポートを発表したUBSによると「対応策として、CTAはロングポジションの株式を大幅に削減している。SVB破綻発表後、250-300億ドル相当の株式が売却された」との見解。米株が中心であろうが、日本株も含まれると見られる。

なお、14日までに欧州銀行株に対する投機筋の売り持ちは157億ドル超と伝えられている。追跡対象は113金融だった。ECB(欧州中央銀行)の利上げを見込んだポジションだと思うが、一斉に踏み上げられれば、欧州株全面高、急伸場面も有り得よう。

16日はECB 理事会が開催された。ECBは、頑固、融通が利かないとの評判を取り戻すかのように、当初見込み通りの0.50%利上げに踏み切った。ラガルド総裁が認めているように、判断基準となった統計は3月上旬のデータで如何にも官僚的対応。金融危機を無視した格好だが、市場には「利上げ幅縮小ないし見送れば、金融システムの安定性を巡る懸念が一段と高まる可能性があった」と好意的見方もある。この日ドイツ債利回りは2年債が前日2.429%→2.584%、10年債2.134%→2.264%。

米国では、危ない噂の中堅銀行、ファースト・リパブリック銀行救済で、大手銀11行が300億ドルの預金を預け入れると発表。どういう事情か分からないが、14日に同行救済で、イエレン財務長官とJPモルガンのダイモンCEOが協議を行っていたとの報道も16日にあった(JPモルガンを通じて700億ドルの流動性確保と発表していた)。S&P金融は+1.95%(S&P500は+1.76%)、牽引役は情報技術+2.82%、通信サービス+2.77%、別途、SOX指数+4.05%。「TikTok」禁止などの動きが材料視されたようだ。しかし、米大手銀11行が米地銀に預金の形で資金支援すると発表したものの、17日には金融システムの不安定化への懸念は収まらず、金融株が売り直された。ファースト・リパブリック銀行は3割強下げて終えた。ダウ平均の構成銘柄では金融のJP モルガン・チェースとゴールドマンサックスが下げを主導し、NYダウ384ドル安と不安を残して厳しかった週を終えた。

欧米銀行破綻で注目度が薄くなった中国では、「習近平のハリボテ外交」と言われるが、今週は習主席のモスクワ訪問も注目される。見かけは大きく、サウジ-イランの外交再開を仲介したことに続く、ウクライナ和平となるか注目されるが、思惑は交錯する状態が予想される。今は言わなくなった「一帯一路」やAIIBが鳴り物入りで登場した時に比べ、市場はそれ程反応していない様に見える。インフレ観を介しての評価になると考えられる。



日本株をどうする


「急激な利上げに耐えられない企業、金融機関が発生する」「中銀はインフレ退治か金融安定かの二者択一を迫られる」という構図は、米国と欧州で完全に一致している。この間、震源から遠いはずの日本株も急落した。

日本株の下げは、需給構造に深く関係している。海外投資家の日本株買いが、極端に先物に依存していたことが原因だ。投資家主体別売買動向のデータによれば、3月10日までの8週間で、海外投資家は先物を計4.4兆円買い越した。この間、現物は約6000億円の売り越しとなっている。日本株は、2月は米国株が下落するなかでも粘り強く上昇、3月初頭の5日間では日経平均は1100円を超えて上がった。この間の株価上昇をけん引したのは海外勢の先物買いだったことになる。

欧米銀行破綻で大きく調整した日本株だが、17日の株価反発で、本格的な底入れを見込むには早過ぎる。少なくとも、今週22日のFOMC(米連邦公開市場委員会)発表を見極める必要がある。FRBはSVB破綻に際し、預金者全額保護で預金者を保護した。この大規模措置への解釈は、①FRBが金融危機の芽を察知したことによる利上げ停止のシナリオ,②金融システム対策に万全を期したうえでインフレ退治を予定通り利上げ遂行のシナリオ、この2通りのシナリオがある。いずれも米国株の即時回復は描きにくい。

仮に22日のFOMCで①の対応で株価回復を演出したとしても、結局、資産効果を通じた消費意欲の刺激─インフレ再加速となり、FRBはその後引き締め姿勢を強化せざるを得なくなる。

日本株をどうするか。FRBの最優先事項がインフレ退治だったように見えた先々週までは米金利高、株安に備える観点からバリュー(割安株)特性を最優先した。ここにきてFRBの優先課題が変わり、ハト派化の可能性も出てきたため、特定のターゲットを絞るのは難しくなっている。むしろ銀行破綻で景況感悪化が想定される。景気後退がこれまでの利上げによる景気後退より早く表れるとみて、ディフェンシブ性を優先するしかないだろう。今回の金融不安は銀行の貸出態度、企業の設備投資意欲、家計の消費センチメントいずれに対してもプラスにならないためだ。


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